日本測地系2000座標変換アルゴリズムの拡張
 
3.精密変換モードの適用範囲限界
 
地理院が提供する座標変換プログラムには、以下の2種類のアルゴリズムが組み込まれています。
@ 精密変換モード:国土地理院が整備した座標変換パラメータファイルを用いて精密に変換する。
A 近似変換モード:3つの基本パラメータのみ用いて、およその精度で座標変換する。

上記の精密変換モードには非常に困った適用限界があります。国土地理院から提供されている座標変換パラメータファイルはちょっと海上に行くと整備されておらず、結果として、しばしば座標変換不能が発生します。
以下では、実際に国土地理院から提供されている座標変換パラメータファイルを用いて幾何補正した画像を用いて具体的に説明します。
図1は、3つの2次メッシュ533917、544010、544020(東京湾の東側)の日本測地系の画像をつないで表示したものです。この3つの2次メッシュを精密変換モードの座標変換式で幾何補正すると、図2が得られます。
しかし、図1で示す通り、日本測地系では画像データが存在するにも関わらず、図2では白になっている部分が存在します。この部分は、座標変換不能ゆえ、対応点が見つからず、止む無く白色になったことを表しています。この例より、東京湾上の海上道路のアクアラインが途中で消えていること、及び2箇所の赤矢印の先で、わずかだが岸壁が削り取られていることが認識出来ます。
図3に、この岸壁が削り取られている様子を拡大表示します。

 
 
 

次に、図4は1/20万地勢図を用いて、東京湾において、どう座標変換不能領域が発生するか示しています。
同様に、図5では屋久島の周りの変換の状況を示しています。

1次メッシュ3823の魚釣り島に至っては、1次メッシュ全体が見事に消滅してしまいました。これは、魚釣り島全体が座標変換パラメータの対象外であることを意味しています。実際に地理院の以下のWebサイトを見ると、以下の島は、座標変換パラメータが未整備であると記されています
(http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/tky2jgd/download/Help/pararea.htm)。
変換パラメータのない島(主なもの)
南鳥島,沖ノ鳥島,南硫黄島,硫黄島,北硫黄島,西之島,蘭萬波島,須美寿島,ベヨネーズ列岩,銭州,沖大東島,魚釣島,久六島,北方領土,横当島

以上より、単純な精密変換モードのみでの座標変換では、日本全国の全ての陸地をくまなく座標変換することは不可能であると判断しました。

 
 
 

 

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