本節では、eREX最適ルート検索エンジンのVer2.0からVer3.0への機能強化について説明する。
色々な工夫を加えたことにより、処理が高速化されています。結果として、およそ1.4倍程度の高速化が実現されています(但し、同一データ量換算)。
Ver2.0では探索アルゴリズムの制御を一部のパラメータに、担わせていましたが、それを廃止し、 全てeREX最適ルート検索エンジン側で自動的に制御することにしました(例えば、ノード数による制御パラメータの抹消)。その他の点でも、本質的ではない、或いは重要度が低いAPIを抹消しております。
対応する道路ネットワークデータが、下表に示す通り、格段に増加しました。
項番 | 提供元 | 名称 | eREXVer2.0 | eREXVer3.0 |
---|---|---|---|---|
1 | (財)日本デジタル道路地図協会 | 全国デジタル道路地図データベース | ○ | ○ |
2 | (財)日本地図センター | 数値地図25000(空間データ基盤) | × | ○ |
3 | 住友電工システムソリューション株式会社 | 全国デジタル道路地図データ | ○ | ○ |
4 | 株式会社昭文社 | MAPPLE道路ネットワークデータ(MRD) | × | ○ |
5 | 株式会社昭文社 | MAPPLEルーティングデータ50000 (MRX50000) | × | ○ |
6 | 株式会社昭文社 | 歩行者ネットワークデータ(MRX歩行者) | × | ○ |
7 | 株式会社ゼンリン | 汎用デジタル地図交換フォーマット | × | ○ |
コンバート工程を2ステップに分けたことにより、第一ステップの処理が相対的に軽くなり、カスタマイズが容易になりました。 また、eREX内部形式道路ネットワークファイル内のコード数値の意味について、最適ルート検索エンジン自体は何の仮定も置かなくなりました。 結果として、コード数値の意味がコンバート処理で自由に設定出来、カスタマイズの柔軟性が向上しました。
eREXVer3.0では、元の道路ネットワークデータがメッシュで区切られていることや、日本測地系の緯度経度に準拠していることを全く前提としていません。 つまり、道路ネットワークデータは、例えばシームレスに全世界が繋がっている巨大DBでも構わないとしています。 これにより、世界測地系に対応出来ることは勿論のこと、外国の道路ネットワークデータに対しても対応可能になりました。
eREXVer2.0では基本的に時間又は距離の最小化を目標としていました。 eREXVer3.0では、(仮想)コストを導入し、この(仮想)コストの最小化を目標とします。 (仮想)コストの定義には柔軟性を持たせています。具体的には、以下のデータをコストに組み込むことで、 多様な価値観に基づいた経路の算出が可能になりました。
例えば、傾斜が急なリンクのコストを上げる。
例えば、料金所に一致するノードのコストを上げる。
例えば、右折やUターンのコストを上げる。
また、仮想コストの定義式にはリンクの優先度も含まれており、結果として、ある特定の条件を満足するリンクの優先度を上げることで、 特定リンクをより通り易くすることが可能になりました。この機能により、例えば、走りやすさのランクを考慮して、 走りやすい道路リンクを優先的に選択する、と言うような機能も実現可能です。
色々な面で、規制の記述能力が強化されています。具体的には以下の通りです。
特定の曜日にのみ有効な規制を記述することが可能になりました。
祝日にのみ有効な規制を記述することが可能になりました。
2本のリンクの組み合わせとしてのペアリンクの導入により、右折禁止、左折禁止を記述することが可能になりました。
規制に対して、時間遅れ(Delay)やコスト(Cost)を指定することが可能になりました。
「年月日独立」(年、月、日、時分秒 毎に独立して考える)と「月日連続」(年月日は組み合わせて連続的に考え、 時分秒は年月日からは独立して考える)の2種類の解釈法の導入により、規制の日付の記述能力が格段に向上しました。
eREXTranslateExオブジェクトにより、道路ネットワークのトポロジー情報、座標情報等の取得メソッドが拡充されました。特定矩形や特定ポリゴンと重なるリンクの取得も可能です。これにより、特定領域内のリンクを通行禁止にすることも可能になりました。
スレッドセーフになっており、Web上の最適ルート検索サーバとしての運用が可能です。